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「ひやおろし」異聞 [日本酒(いろいろ)]

10月に入りました。
日本酒は、この時期は「ひやおろし」の季節ですね。

「ひやおろし」と言うのは、元々は蔵内の用語だそうですね。
冬に仕込み春先に搾ったお酒を一度火入れしたあと、夏の間、蔵で保管し眠らせて熟成させ
もっともベストな状態になったものを、二度目の火入れを行わず出荷するものですね。

日本酒は、搾りたての「新酒」をその年の酒の出来を占なうものとして珍重する場合も有りますが、
新酒の荒々しさがとれて熟成感のアップしたこの時期のお酒を
「日本酒の旬」とする場合も多いようです。

もっとも、現在は、醸造技術、保管技術が進み、
冬に限らず、良いお酒を醸造する事も可能になったので、
本当の意味での「ひやおろし」は、少なくなったと聞きます。
この時期用に二度目の火入れ無しで出せ、まろやかさを強調したお酒、
いわば「ひやおろし」タイプのお酒を専用に造っている蔵元さんも多いようです。

さて、二度目の火入れをしないのが特徴の「ひやおろし」。
先日、ある日本酒BARで面白い話をお聞きしました。


一般的に「ひやおろし」で二度目の火入れをしない理由は、

「熟成による風味をそのままお届けするため。
熟成中に出てきたお酒本来の香りや、馴染んだ味わいが加熱によって壊されず、
そのまま楽しむことができます。」( 日本名門酒会HP より)

と、説明される場合が多いようです。

ところが、その日本酒BARのご主人が、
ある大手の蔵元さんの高齢の杜氏さんから聞いたと言う理由は、
全く別の理由だったそうです。

「昔の酒屋は、冷蔵設備なんて整って無かったから、
夏場に火入れをしてない酒なんて置いといたら、あっと言う間に劣化しちまうでしょ。
だけど、9月も終われば気候もかなり涼しくなるから、
保管状態が完全で無くても、火入れをしなくてもほとんど劣化しないんですよ。
この時期に出したお酒は、正月までにほとんど飲まれちゃうしね。
この後の時期になると酒屋も家に火を入れだすし、春先まで持たせないといけないから、
しっかり二度目の火入れをして酒の劣化を進みにくくしないといけない。
二度目の火入れの手間を省けるのは、この時期だけだったんですよ。」

要するに、元々は、蔵元さんの手間を省くため、
つまり「コストダウンのため」の「ひやおろし」だったと言うのですね。
話の真偽は、定かでは有りませんが、二度目の火入れをしない理由としては、
「味を楽しむため」という説明よりも判りやすいし、憶えやすい(笑)のでは無いでしょうか。

また、この話からも判るとうり、「ひやおろし」は、二度目の火入れが無いので
普段のお酒より劣化しやすいようです。
生酒同様、冷蔵庫で保管し、なるべく早めに飲み切ってしまいましょう。
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ソバツユ

面白い説ですね、かなり説得力のある話のようで♪

「ひやおろし」は何時ごろから耳にしたのでしょう、「秋あがり」とも言っていた頃もあり。

二度目の火入れをしないと言うう事は「生詰」と同意なのでしょうか?
以前は「生貯」「生詰」などの言い方は聞かなかったかと・・・

日本酒の世界はわからない事がおおいですね、そのファジーさが良いのでしょうね♪
秋の生詰ということと理解すればよいのかどうか、
しかし、一度火入れした酒を生と言うのにも疑問ありです、不思議な表現ですね(笑
by ソバツユ (2008-10-05 09:51) 

真秀

ソバツユ様

「ひやおろし」は、日本名門酒会さんが
商業的理由で積極的に広めたのが広まった切っ掛けのようですね。
「秋あがり」は、「ひやおろし」と同じ意味合いですが、
「燗あがり」と同様、「秋になると熟成して味が増す」という
現象を表す意味合いが強いように思います。

「生詰」も1回火入れですが、
こちらは、熟成させず出すお酒もこの呼び方で呼ばれるようですので
「生詰」の方が広義の呼び方かもしれませんね。

私もそうですが、日本人は、
ビールや刺身、野菜やシングルモルトまで、
「細かに手を加えた芸」よりも「出来る限り最低限の手を加えたもの」を
「生」「フレッシュ」「シンプル」として喜ぶ傾向が有りますので、
それを踏まえての「生」の名を持つネーミングなのでしょうね。
by 真秀 (2008-10-05 16:58) 

でえ

面白いお話ですが、どーなんでしょ?

冷蔵してたらお酒は変化が少ないですからねえ。
それに私の知ってるお蔵さん、貯蔵タンクに冷蔵設備って無かったよーな気がします。
(確信が無いので、今度伺ってみますが・・・)
by でえ (2008-10-06 02:46) 

真秀

でえ様

私の書き方がよくなかったかもしれませんね。

蔵元さんで必要な熟成を行った後、
火入れをしてさらなる熟成(ある意味「過熟成」?)を止めて出すか
火入れをしないで、止めないで出すかと言う話ですので、
蔵元さんの冷蔵状態は、あまり関係ないのでは、無いかと思います。

それと、聞いた話では、昔からの造り酒屋の蔵の夏季の温度状態は、
冷蔵、冷房設備が無くても一般商店等より、かなり良いようです。

以前、福生の田村酒造さんに伺ったおりこんな話を聞きました。

「うちの蔵は、この位置で無いと駄目だったんですよ。
この樹齢700年の大けやき。
これが、夏場、葉で蔵に当たる日を遮り、蒸散で気温を下げて
天然のクーラーになってくれるんです。」

そして、その上で周囲に作業用をかねる水路を作り、
蔵も風向きなどを考慮して熱がこもらないよう建ててあるそうです。

田村酒造さんの蔵は、特殊な例では無いと思います
古くからの酒蔵はほとんど、こういう自然の環境を利用する知恵を
上手く取り入れて建てられており、夏季の温度上昇は、
一般家屋よりは、低いようです。

勿論、効果としては、
現代の冷房冷蔵設備ほどでは無いと思いますが、
冷房冷蔵設備がまだ無い、あるいは、普及していない頃としては、
蔵は、ベターな環境だったのでは無いでしょうか。
by 真秀 (2008-10-06 10:00) 

でえ

了解しました。
そういうお話なら納得が行きます。
ありがとうございました。
by でえ (2008-10-07 22:44) 

真秀

でえ様

こういうちょっと真面目(?)な話は、
途中で自分が面倒くさく成らない様、
勢いで書いている時が有りますので
言葉足らずになっている時が、まま、ありますのでご容赦を。

鋭く、突っ込んでいただいたお陰で、抜けている面を
補完する事が出来ました。

これからも、よろしくお願いいたします。
by 真秀 (2008-10-07 23:46) 

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